フィジー共和国での自然体験実習(計画)

2003.6.29

工学部教育研究センター(化学)

萩谷 宏

 

期間:200394日〜915日の11日間(10泊と機内1泊)

場所:フィジー共和国、ナンディ、ガリマーレ石灰岩周辺、及びマナ島。

対象:原則として武蔵工業大学工学部・環境情報学部2年生以上の希望者

人員:学生25名。他に教員4名、学生アシスタント2名、オブザーバー2名予定。

旅行代理店:東急ストリームライン(株) 担当:寺阪(往復航空券・保険取扱)

コーディネート:UTC-Fiji(現地旅行社)、ウイング・インベストメント(株)…村関係

大学側引率者:皆川 教授(都市基盤工学科)、萩谷 講師(教育研究センター化学)

佐藤 技士(都市基盤工学科)

学外講師:勝木 俊雄氏(独立行政法人森林総合研究所多摩森林科学園、植物学)

共同実施:南太平洋大学(Univ. of South Pacific) School of Pure and Applied Sciences

   Father Dr. John Bonato(地球化学専攻、Head of School

Prof. William Aalbersberg(応用化学専攻)と3月に打ち合わせ。

他にProf. Randolh Thaman(生物地理学専攻)が候補だが3月は海外出張中。

費用:学生1人あたり18万円見込み。(渡航費用、現地宿泊費、食費を含む)

   内訳:航空券10万円、宿泊費・交通費:4万円、食費・消耗品費・実習費・学外講師費:4万円。

目的:

 1)フィジーの自然観察:地形・地質調査、資源探査、植生調査、天体観測、気象観測、珊瑚礁観察

 2)環境保全実習:マングローブ林の植林、砂防、砂地緑化、(OISCA現地事務所と交渉中)

 3)土木・建築実習:測量(GPS含む)、道路建設、上下水道整備、橋梁設計、建築、住環境調査。

 4)国際交流・民俗:カヴァの儀式、現地語の修得、民俗調査、農業実習、スポーツなどでの交流

 5)語学研修:実用的な英会話(フィジー共和国は英連邦の一員、公用語は英語)

 6)メディア:映像記録実習、実習報告レポート作成。

 

日程

9/4(木)成田19:00発 FJ303 機内泊

9/5(金)ナンディ空港6:40着 ナンディのホテルへ。休息。12:00昼食、ミーティング。

      夕食まで自由行動。ナンディ泊

9/6(土)7:00朝食、8:00出発 9:00海岸の村でのマングローブ植林実習。14:00終了。シンガトカ泊

9/7(日)8:00朝食 実習準備・講義。午後USP教員・学生と合流。シンガトカ泊

9/8(月)8:00朝食 9:00移動 11:00タワタワンディまたはコロニサガエ村にてカヴァの儀式。

      13:00 オリエンテーション:自然観察、地形・地図確認。GPS実習。シンガトカ泊

9/9(火)地質調査/植生調査/測量実習を3グループに分かれて実施 シンガトカ泊 天体観測。

9/10(水)地質調査/植生調査/測量実習 第2日 シンガトカ泊

9/11(木)地質調査/植生調査/測量実習 第3日 調査結果まとめ。現地泊(希望者)

9/12(金)村での調査報告会。午後ナンディ経由でマナ島に移動 水処理施設など見学。マナ島泊

9/13(土)珊瑚礁観察 オプション レポート作成 バーベキューパーティー。天体観測。マナ島泊

9/14(日)12:00ナンディに移動 買い物 実習内容まとめ ナンディ泊

9/15(月)8:30チェックアウト 10:30ナンディ発FJ302 16:30成田着 解散

 

現地状況

 フィジー共和国:人口約85万人。ビチレブ島及びバヌアレブ島を中心に、数百の島から成る。首都スバ。フィジー人とインド人が各51%44%を占める。政治的にはフィジー系が強く、経済の実権はインド系住民が握る。ラグビーが盛ん。宗教はカトリック(フィジアン)、ヒンズー教・イスラム教(インディアン)など。対日感情良好。治安は都市の一部を除き良好。主要産業は観光、サトウキビ農業、鉱業、軽工業、漁業。GDPは約17億ドル(2000)。南太平洋では中心的な役割を果たしている。

 日本からは成田発の直行便が月木土の週3回往復。距離7600kmで所要時間約8時間。時差は日本時間+3時間。道路は左側通行。運転免許証は日本のもので通用する。通過はフィジードル。1F$=約55円。軽作業の日当がF$10-15程度。食事はフィジー系の集落ではタロ、ヤム、キャッサバなどの芋類、バナナを主として、米、小麦、野菜、鶏肉、魚など。インド系は伝統的インド料理を主体とする。

 政治状況は昨年の総選挙後安定。電力の供給は都市部と一周道路沿いにあるが、停電があり、やや不安定。都市部では携帯電話が使用可能。水道水は飲用に問題なし。道路、橋梁など社会資本は未発達。

 大陸から離れているため、伝染病、寄生虫の心配はない。6/29現在SARS感染者なし。

 

メインの調査・実習地

 フィジー第二の大河・シンガトカ川の中流、河口から約20km上流の内陸部にある石灰岩の丘陵地帯。

動植物相、地質調査などのほか、ガリマーレ石灰岩の採石場開発にともなう道路設計、測量、建設、橋梁設計、道路修繕などの作業が想定される。地権者は8つの集落に分かれており、居留地と山に入るためには、このうちひとつの集落で祖霊に対する儀式(セブセブ:カヴァを飲む儀式)を最初に行うことが必要。貨幣経済の浸透はある程度進行しているが、山間部では伝統的な集落形態と生活様式をかなりの程度守っているので、民俗学、宗教学的な研究にも好適。

 

マナ島

 ママヌザ諸島の珊瑚礁の島で、日本の開発会社(葵リゾート)の所有するリゾートホテル。日本人スタッフ常駐で、観光客も日本人の利用が多い。珊瑚礁の生物相・生態系の観察などを想定。

 

コーディネート・スタッフ

 ウイング・インベストメント(株)は群馬県桐生市の会社で、およそ10年にわたってフィジー共和国で投資活動の他、海岸清掃などのボランティア活動をしている。

 

メディア関係

NHKのディレクター2人がオブザーバーとして同行を希望。

 

実習の成績評価

・現地での活動状況と、帰国後提出のレポートで成績評価する。学外実習またはインターンシップの単位(各学科で異なる)、または後期の教養ゼミナールの単位を認定する予定。

 

(参加者リスト省略)

 

補足資料:

実習全体について

 

*3月1日から8日に現地の下見。萩谷と勝木(森林総研)、学生2名で非公式に実施した。

731日から87日に、南太平洋大学他との正式な交渉と直前の下見を実施予定。皆川教授と萩谷。

*現地泊は、ウイングのボーリング事業の際に技術者のベースにしている、集落の空き家と村の集会所を借用

する予定。30名の収容は可能。今回は1泊が限度か。

*シンガトカでは学生に炊事、洗濯など家事もできるだけやらせたい。コテージ形式のクロウズネストが候補。

*ナンディの宿泊はドミニオン・インターナショナルまたはウェスツ・モーターインを想定。3名または2名ずつ。マナ島はブレ形式で3人ずつ。

*学生の経験者をアシスタント(リーダー)として配置。(アルバイトとして扱う)

USPとの共催交渉は順調。好意的。企画書を次回までに用意。交流と共同学習の機会を作る。

*車の運転の問題。学生には運転させない(事故防止)。

*保険をかける。

 

ナンディでの実習

*グループに1台ずつ、現地用の携帯電話を持たせる。(山岳部では短波無線機携帯を考慮。)

*動画、静止画による自然、民俗の観察記録制作。

*映像記録はメインの目的ではないが、NHK他の取材・将来の番組制作も想定。業務用カメラを準備。

*レポート作成は早めに。当日ある程度書かせないと、記憶が薄れる。

 

ガリマーレ石灰岩の現場実習

*調査中はコーラルコーストに宿をとり、貸し切りバスで毎日往復。朝9時発、夕方15:30現地発。

途中の買い出しを含め、宿には17時帰着。(日没18時)

*作業・実習は4人一組。6班 教員1名と

USPの学生・教員は、現地で合流。参加人数によるが、基本的には宿を含め同一行動で対応。

*非常時対策、特に病院、診療所の確認。必要があればヘリ空輸できる。

*現地習慣として、すべての物資を共同で所有し、分け与えるのが美徳であるということになっているので、

貴重品の扱い、現場への持ち込み物品の制限など注意が必要。基本的に宿に預ける。

*日曜は完全に休む習慣なので、作業を入れない。

*環境保全実習(マングローブ植林)は、OISCAフィジー開発団の協力を得る。有料。農業実習は無理。

*アルコールの扱い。乾期なのでタバコの注意。学生の態度悪ければ強制送還。(まず心配ないが)

*現地泊の場合、宿舎の問題、トイレの問題。乾期なのでシャワーの水が不足する可能性あり。

 

マナ島での実習

*マナ・アイランドリゾートの環境対策を見学。発電、貯水、水処理、ゴミ処理など。

*珊瑚礁の観察の指導など。ホテル側のアクティビティの活用。

*南半球の天体観測は視界の点からマナ島が好適か。

*レポートを現地にいるうちに書かせる。テーマは自分の発見を活かせるように、ある程度自由にする。

*ここでの費用が比較的多いので、安くする工夫の必要あり。
<資料>

3月下見

 萩谷 宏、勝木俊雄(農水省森林総研多摩森林科学園)、岩松俊哉(環境情報3年)、坪井博志(通信3年)

 個人の責任で実施。

 

3/1 成田発FJ303

3/2 ナンディ着、マナ島へ移動(空路/水路) マナ島泊

3/3 午後 マナ島からナンディ(空路/水路)

   ナンディから陸路シンガトカへ OISCAフィジー挨拶   シンガトカ泊

3/4 ガリマーレ石灰岩視察          シンガトカ泊

3/5 シンガトカから陸路スバへ        スバ泊

3/6 南太平洋大学、MRD、その他機関訪問    スバ泊

3/7 スバから陸路ナンディへ         ナンディ泊

3/8 ナンディ空港から成田へ FJ302 解散

 

1)マナ島の見学。3ヶ所の海岸、飛行場、丘陵部の見学。基盤設備の見学を提案。考古遺跡の存在。

宿はブレの利用で料金を抑えることを検討。行きは飛行機、帰りは船の利用がお勧め。

2)シンガトカにて。コロニサガエ村でカヴァの儀式。歓迎される。周辺8ヶ村の了承を得る。

 タワタワンジ村にて、宿泊の件、ボーリング基地と集会場の借用に関して内諾を得る。

3)現地調査下見。石灰岩の崖のルートは避ける。沢沿いの調査。植生はかなり特殊。地質調査は見学程度で、

むしろ測量とマッピングの実習になるか。スコールに遭い、後半は作業にならず。

4)OISCA FIJI訪問。フィジー開発団団長代行・山田雅則氏と会談。9月は乾期のため植林実習はなし。

マングローブ植林実習は可能。有料。現地の村の協力が必要。年に数回日本からの植林体験実習受け入れの

実績あり。事業所での農業実習も勧められる。ただしUSPの学生が入るのは難しいとのこと。

5)USP訪問。学部長のBonato氏ら4名の教員が出席。企画は非常に歓迎。今回の実習期間が、ちょうど

semester vacationにあたり、たいへん好都合とのこと。環境アセスメントに興味を示す。会談後、地質学

の実習室で学生、教員と会話。学生に計画を話すとぜひ参加したいと目を輝かす。

6)フィジー政府の鉱物資源局に挨拶、日本の援助の問題点を見学。(モノだけ送って放置)

国立博物館を見学。自然史部門がなく、考古学、歴史中心。植物園も見学するが、あまり充実していない。

7)スバからナンディのQueen’s Road沿いの植生。東ほど降水量が多くトロピカルになる。

8)ウイングの全面的な協力があって実現。中野マネージャー、金瀬さん、三冨さんが分担して同行。

 

*主な訪問先

 南太平洋大学:http://www.usp.ac.fj/

 OISCA(フィジー):http://www.oisca.org/project/fiji/index.htm

(参考)

 フィジー政府観光局:http://www.bulafiji-jp.com/index2.html

 マナ・アイランドリゾート:http://www.aoi-resort.co.jp/fiji/

 ナビティ(シンガトカの宿):http://www.navitiresort.com.fj/

ホリデイインスバ(スバの宿):http://www.sixcontinentshotels.com/h/d/hi/hd/SUVVP

 ウエスツ・モーターイン(ナンディの宿:観光局):http://www.bulafiji-jp.com/hotel/nadi-3.html

ガリマーレでの実習形式案

 

9/8(月曜)〜9/12(金曜) USPと共同実施するのはこの部分のみ。

 

1日目はオリエンテーション。村への挨拶と、調査地全体の確認。ガイダンス。

・地質は河原での石の分類、走向・傾斜の測定法など。

・植物は代表的な種類の確認か。

GPS機器の動作確認、地図の位置確認。

 

2,3,4日目に調査実習。3人1班で、6班を想定。5日目は村で成果発表(英語で)して移動。

2班6人ずつ3組に分割。地質調査、植生調査、土木(測量)実習にそれぞれ分ける。

土木実習が不可能の場合、民俗調査や住環境調査、農業実習をあてる。

引率者は、教員各1名、学生リーダー1名をつける。ウイング側で現地技術者を出してもらうことも考慮。

(要報酬)

 

ルートまたは作業範囲を3つに分けて設定し、引率側はその3つの場所を1日ずつ調査して、

翌日は次の場所、翌々日は3つ目のところ、という具合にローテーションする。

学生は、2班単位で、初日は地質、2日目は植生、3日目は土木、という具合に回転する。

 

   地質   植生   土木

9/9  1・2班 3・4班 5・6班

火曜 中央A沢 東側地域 左岸測量

9/10 3・4班 5・6班 1・2班

水曜 東側B沢 西側地域 右岸測量

9/11 5・6班 1・2班 3・4班

木曜 西側C沢 中央地域 道路測量

 

USPの学生・教員は好きなところに加わってもらう。専門性を優先するなら、3日間地質だけ、植生だけの実習に参加することも可能。ただし、その場合は人数の集中は困るので、各6人程度(日本側学生と同数)におさえて欲しい。宿とバスの制約から、教員・学生合わせて12名で交渉する。

 

作業は基本的に3,4時間の内容で設定し、現地でできるだけデータ整理をしてから宿に帰る。

自炊させるとすると、日のあるうちに帰らせたい。木曜夜は、村で1泊。

最終日(金曜)は村の人々の前で、彼らにわかるように成果報告を簡単に英語で発表。

村でどうやって見せるかが問題。発電機を持ち込まない限り電気がない。模造紙に書かせるか?

 

作図などデスクワークの場所と時間の確保が問題。ナンディでは会議スペースのある宿を選定中。